円安はインバウンドに「追い風」なのか?その裏リスクとは?
2022年4月から、ドル高レートは1ドル120円台で推移し、一時は1ドル130円を超えることもありました。アメリカの金利政策の転換や世界的な情勢不安などを背景に、日本は約20年ぶりとなる「円安」を経験しています。
通貨レートに大きな影響を受ける分野の一つがインバウンドです。円安が進むということは、外貨を持って入国してきた外国人にとっては、使えるお金が増えることになるからです。これはインバウンド消費額の伸びが期待できるという事となります。しかし、円安がインバウンドに好影響しかもたらさない訳ではありません。長期的に見た場合、円安によって観光地としての日本の価値が下がっていくリスクもあります。
円安で観光資産が「買われる」リスク
円安によって日本のインバウンドにももたらされるリスクにはどのようなものがあるのか?個人消費だけでなく、不動産などへの投機も円安の影響を受けます。海外の投資家から見れば、日本の資産は現在「安く買える」状態になっているといえます。円安が今後も続いていけば、外資系企業が日本の観光資産を安く買い叩く可能性もあります。
例えば近年では、中国人投資家の間では日本の「不動産爆買い」の動きもみられます。北海道や沖縄といった、海外旅行客の多い地域に人気が集まっています。そうした土地が外貨に「買われる」動きが続くと、たとえ北海道や沖縄が集客に成功しても、その利益が最終的に行き着く先は「中国」になるという現象が起きかねません。
円安は、インバウンド消費額の伸びという短期的、限定的なメリットの裏に、こうした長期的、構造的なリスクを抱えているということを理解しなければなりません。

長期的な円安は、客層も変わる可能性も
さらに、円安は訪日観光客の客層を変える可能性もあります。
例えば、日本からタイやフィリピンといった東南アジアの国々に旅行する際、多くの日本人が期待するのは「モノ・サービス共に安く済ませられる」という点であると考えられます。それは日本がバーツやフィリピンペソよりも高く、日本人からしたら「物価が安い国」であるからです。
日本がもつ本来の魅力よりも、日本での安い消費行動のイメージが前に出てしまうと、オーバーツーリズム問題も生じてきます。「安い観光地に外国人が殺到する国」という評価が定着してしまうと、日本のブランドイメージの毀損にもつながります。そうした悪循環が生じれば、日本の観光業の長期的な衰退は避けられないでしょう。
安売りではなく、納得感のある高付加価値化を
「円安=インバウンドに追い風」という考えは、今や主流の論調になりつつあります。しかしその「追い風」がどの程度の強さかについては、冷静に捉える必要があるのではないのでしょうか?
円安は、長期的に見れば日本のインバウンドを悪い方向に変えてしまう可能性もあります。豊富な観光資源を抱えながらも「安い国」としての評価が定着してしまうことは避けなければならない未来です。「安い国」になることを避けるためには、インバウンド全体で「高付加価値化」を進め、外貨を獲得していく必要があります。ただモノやサービスの値段を上げて「観光地価格」を設定するだけでは、訪日外国人の満足度は下がってしまいます。「高付加価値化」による単価の引き上げを目指すには、日本固有の魅力を再発掘し、それを現代のニーズに合った形式で提供することが必要です。
円安がインバウンド回復の起爆剤となり、日本経済が再び活気づいていくのか。それとも、円安により安く買い叩かれ、消耗していくのか。約20年ぶりの円安局面にある今、日本のインバウンドは帰路に立っているといえます。
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